幼い頃に自分達を襲ったダイオウイカの正体を知ってしまった2人…それ以来まめみは塞ぎこみ、ナワバリバトルにも行かなくなってしまった…
しかしこのままお金を稼がない訳にも行かないので、まめおは1人ナワバリへ向かった。
まめおも決して平気な訳ではないが、まだダイオウイカに対して立ち向かえる余裕は残っている一方で…まめみは打たれ弱く脆い一面があり、今はとても耐えられる状態ではない。
まめお「行って来る、まめみ。」
まめみ「……まめお…!」
まめお「…大丈夫だ、お前を置いて行ったりしない…必ず戻ってくるから、な?」
まめみ「………うん…。」
まめお「…じゃあな。」
そう言ってまめみを抱きしめると、まめおはハイドラントカスタムを担いで出掛けていった。
実はまめおはランク50に近く、早くカンストしてまめみを安心させたい…もっと強くなり彼女を守りたい…そんな思いが今のまめおを突き動かしていた
場所はヒラメが丘団地と…Bバスパーク。
ここでランク50になるのか…まめおは複雑な思いを抱きつつ、ハイドラントカスタムを担ぐ手に更に力を入れた。
ハイドラントカスタム「(大丈夫かまめお?)」
まめお「…あぁ、頼むぞハイドラントカスタム!」
強い決意を胸に、まめおはスタートと同時に飛び出して行った。
一方まめみは…家で1人、まめおと同じ色の青いイカクッションを抱きしめて床にうずくまっていた。
まめみ「まめお…。」
今の不安定な状態であるまめみにとって、まめおがいないのは「孤独」という名の「恐怖」で…それらが纏わり付いて更に不安は強くなる。
心は誰かに握りしめられている様な痛みと苦しさを伴い、涙が溢れて止まらない。
パブロ「(まめみ…。)」
まめみ「うっ…うぅ…!ひっく…ひっく…ぐすっ…ぐすっ…!」
パブロ「(まめみ…!)」
まめみ「パブロぉ…!もし…もしまめおが帰って来なかったら…あたし独りぼっちになっちゃう…!」
パブロ「(何を言ってるの!まめおが簡単にやられるわけ無いじゃない…大丈夫よまめみ…!)」
まめみ「うっ…うっ…ひっく…ひっく…!」
ボロボロと涙を流し続けるまめみに、パブロも心を痛めていた…。
まめみはしばらく泣き続けた後に疲れて眠ってしまい、それから少ししてまめおが帰ってきた。
まめお「…パブロ、俺に力を貸してくれ。」
パブロ「(まめお…ランクポイントが…!)」
まめお「…まめみはモンガラでパブロで勝ってランク50になった、俺はBバスで必ず勝ってランク50になる…だから頼む、力を貸してくれ。」
パブロ「(…分かったわ、まめお。)」
まめお「ありがとうパブロ………まめみ、俺は乗り越えてみせる…そしてお前を守る!」
そう言ってまめおはパブロを手に、再びナワバリバトルへ向かった。
一方…しばらくして目が覚めたまめみは、パブロが居なくてキョロキョロしていたが…
ハイドラント「(パブロは小僧が連れていったぞ。)」
まめみ「まめおが…?」
ハイドラント「(…まめみ、我と出会った時の事を覚えているか?)」
まめみ「うん、覚えてるよ。」
~回想~
フェスがあったあの日…ブキチが新しいブキを仕入れたとニュースで知ったまめみは、フェスバトルの後にお店へ…
彼の長い話を聞いた後、ハイドラントを見た。
消火栓を元に作られたブキ「ハイドラント」
そのフォルムは消火栓のタンクに黄色のホースが繋がり、3つの発射口が付いている。
試し撃ちをしたが…その重さは半端ではなく、チャージ時間も長くかなり癖の強いスピナーだ。
まめみはこの時、ハイドラントの購入を諦めた。
ハイドラント『(…フン、我を使うつもりだったのか。小娘に扱える様な我では無いわ。)』
それから一ヶ月後、年末のフェスにて。
ブキチがのんびりお茶を飲んでいると…。
バーン!!
まめみ「ブキチー!ハイドラント売って!」
ゴフッ!!
吹いたお茶でやられた!
驚いたブキチはお茶を吹いて、顔がビショビショになってしまった…。
しかし、まめみはそんなブキチを気にする事も無く嬉しそうだ。
ブキチ「まめみちゃん、いきなり何でしか…。」
顔をハンカチで拭きながら尋ねるブキチに、まめみは目をキラキラ輝かせながらこう言った。
まめみ「ずっと欲しかったの!ハイドラント買う為にスプラスピナーカンストしたんだよー!」
ブキチ「で、でもハイドラントはとても癖が強いでし。まずはバレルスピナーで慣らしてから…」
まめみ「ハイドラントが良いの!」
ブキチ「わ、分かったでし…。」
彼女の強い意志にブキチが折れて、ハイドラントを持ってこようとしたが…
まめみ「ブキチ、あそこに飾ってあるのがいいの。」
ブキチ「え?けどまめみちゃん、あそこに飾ってあるのはプロトタイプ…性能は製品版と同じでしが、タンクの角度とか一部の見た目に違いがあるでしよ。」
まめみ「それでもあのハイドラントが欲しいの、初めて見た時からずっと決めてたんだから!」
ブキチ「そ…そこまで言うなら…」
まめみ「ありがと~ブキチ!」
ハイドラント『(……………。この小娘、確か前に我を試し撃ちした…いつも店の外から我を飽きもせず見ていた…。)』
まめみ「よろしくね、ハイドラント!」
ハイドラント『(今までハイドラントを使えた者はそういない。この小娘も、すぐに音を上げて我を使わなくなるだろう。)』
そして…ハイドラントとのナワバリバトルの日々が始まった。
~塗り0~10000位まで~
まめみ「あ、当たらない!敵が近くに!!チャージが間に合わ…ぷぎゃっ!」
スランプも重なり、本当に使いこなせる様になるのか不安になる…。
ハイドラント「(小娘…使い辛いであろう、我を使わなくても良いんだぞ?)」
まめみ「うっ……負けない!絶対にハイドラントを使いこなせる様になるもん!」
ハイドラント「(フン、どこまで持つか見物だな。)」
~15000位~
まめみ「えぇ~!?ハイドラントのチャージって一回転じゃ無くて二回転なの!?」
まめお「こんだけ塗って気づかねぇとか、馬鹿じゃねーの?」
まめみ「何よ、しょうがないじゃない…知らなかったんだから!」
まめお「そんなのに気づかない様な鈍くさいイカはお前しかいねぇよ。」
まめみ「酷ーい!まめおの意地悪!」
まめお「わっ!馬鹿やめろ…ここでヒッセン使うな…うわぁぁぁ!ぷぎゅうぅぅ~!」
ヒッセンでやられた!
ハイドラント『(この小僧と小娘…今まで出会った奴らとは違うな…。)』
~20000位~
まめみ「ふふっ、楽しい!」
少しずつ慣れて、勝率も上がり始める。
ハイドラント『(この小娘やるな…我をここまで扱うとは…。)』
~100000位~
まめみ「ふぅ…。」
ハイドラント「(よく頑張ったな、小娘…いや、「まめみ」。)」
まめみ「…………!」
やっとハイドラントが自分に心を開き、名前を呼んでくれた。まめみは嬉しさに表情がパアァァァッと明るくなった。
~300000位~
ハイドラント「(まめみ、流石だな!我が認めた主の実力に相応しい。)」
まめみ「えへへ、嬉しい!」
~500000位~
ハイドラント「(む、来るぞまめみ!)」
ドゴーン!
まめみ「間合いをもう少し詰めて…!」
3Kスコープを積極的に倒しに行く様になる。
チョーシが良いと、17キル1デス等の好成績を出したり、高ランク帯でも上手く戦えるようになった。
~700000位~
ハイドラント「(まめみと我の前に敵はおらんぞ!ハッハッハ!)」
まめみ「ガンガン攻めるよー!」
そして…
~999999カンスト~
ハイドラント「(我をここまで扱える様になるとはな…成長したぞまめみ。)」
まめみ「ありがとうハイドラント、これからもよろしくね…大好きよ。」
そう言うとまめみは、ハイドラントにキスをした。
~回想終~
ハイドラント「( 最初は我をロクに扱えなかったお前が…今ではここまで立派になった。我は嬉しいぞ。)」
まめみ「ふふっ、ありがとうハイドラント。」
ハイドラント「(やっと笑ったな。)」
まめみ「え?」
ハイドラント「(最近のお前は全く笑っていなかった。)」
まめみ「ハイドラント…。」
ハイドラント「(パブロから話は聞いた。…何を恐れている、まめみ?)」
まめみ「もしまめおを失ったらあたし…!」
ハイドラント「(まめみ…まめおはお前を置いて消えたりしない、あの小僧はそんな中途半端な強さでは無いだろう。)」
まめみ「でも…。」
ハイドラント「(まめみ、辛いのも怖いのも分かる。だが…それは己自身で乗り越えなくてはならない。お前は何故戦う?)」
まめみ「あたし…あたしは…。」
ハイドラント「(もう分かっているだろう?)」
まめみ「ハイドラント…。」
ハイドラント「(いつも優しく明るい…笑顔の「まめみ」)はどこへいったのだ?」
あたしの戦う理由…それは
大切な人を守る為
そして…己自身のこの弱さを受け入れて
乗り越える為
怖いよ…不安もある…。
けれど…いつでもまめおとスルメさん、よっちゃんは傍にいてくれた。
だから大丈夫…スルメさんがあの時のダイオウイカでも…
いつもあたし達を見守って助けてくれたその優しさは本当だから…!
まめみ「ハイドラント…ありがとう!」
ハイドラント「(それでこそ、まめみだ!)」
もう負けない…あたしの気持ちは決まっている。
だから…今「ダイオウイカ」を乗り越える!
一方…まめおはBバスパークに居た。
まめお「どこを狙っている!上だ!」
ダイナモローラーテスラ使いの敵を倒し、まめおはナワバリバトルで勝利を重ねていった。
途中、ライムグリーンのダイオウイカが迫って来た時、ほんの一瞬の「恐怖」からキルされてしまったが…無事に勝利。
そして…ランクポイントが717…。勝てば後1回で50になる。
場所はBバスパーク。インクの色は…桃色。
パブロ「この色は…。」
まめお「あぁ、まめみの色だ…これで勝てれば俺は…まめみ…。」
しかし結果は…惨敗。
抑え込まれた上に煽りイカまでいる始末…とても良い試合とは呼べないものだった。
パブロ「(まめお…。)」
まめお「くそっ!何て奴らだ!」
ランクポイントは719…必要なポイントまで後1ポイント。
勝っても負けても…次が最後。
パブロをギュッと握りしめて、まめおは最後の試合へ向かった。
ステージは再びBバスパーク、味方はパブロにホクサイとローラー、対する相手はシューター軍団…
正直不安が頭をよぎった…しかし後には引けない。まめおは持てる力全てを出しきった!
結果は…………勝利!
まめおはランク50になった!
パブロ「(やったわねまめお!)」
まめお「ありがとうパブロ!」
パブロ「(どういたしまして。)」
そして広場に戻り…。
最高ランク、50の証「でんせつのぼうし」を受け取った。
まめお「これで…俺もまめみと同じくランク50。……俺なりに悩んで考えた…けど俺の答えは決まっている。」
俺が幼い頃に負ったこの傷…
その傷を付けたダイオウイカの正体がスルメさん…
知らなかったとはいえ…今まで一緒にいたんだ。
でも…今まで過ごした時間は決して無駄ではない
俺はまめみを…大切な人を守りたい、その為なら…それであいつの笑顔を守れるのなら…例え残酷になっても構わない
だから…今「ダイオウイカ」を乗り越える!
To be continued…