オリジナル小説「奪われた牙」

仇を討つ為、全てを捨てる覚悟をしたガーリル

目の前の光景を見つめ、嫌な予感に襲われるスノウ

真実を確かめるべく、陸へと向かうブルース

それぞれの思いが巡り、悲劇への道を歩み始める…

『その時』は刻一刻とゆっくり、そして確実に迫ってきていた。

 

~奪われた牙~

 

スノウ「誰か…誰か居ないのか!?」

城の中を叫ぶものの、自分の声が虚しく響く…それでもスノウは諦めず城の中を捜し続け【牙の部屋】と呼ばれる1つの部屋に辿り着いた

【牙】とはそれぞれの一族の先祖、つまりラグシー、ルーエ、ダーク、ザフィーア、スノウ、ネグロの牙の事である。牙にはそれぞれの持つ力が封印されており、国宝である武器が姿を変えているものである。

【海の牙:ラグシーソード】、【光の牙:ルーエシール】、【闇の牙:ダークサーベル】、【波の牙:ザフィーアレイピア】、【雪の牙:スノウカトラス】、【影の牙:ネグロベルジェ】

これらの武器は今も牙の中でその強大な力を秘めながら眠り続け、普段は専用の宝箱に保管されているが、危機が迫った時に牙の力を武器として使うのである。

スノウが部屋に入ろうとしたその時

ブルース「スノウ。」

スノウ「ブルース…。」

ブルース「多分ここにいると思ってな…ガーリルは?」

スノウ「いや、それどころか城の中には1人も…後はこの牙の部屋のみだ。」

ブルース「そうか…ここにガーリルが居るといいんだが…。」

そう願いつつドアを開け、部屋に入った2人の目の前に映ったのはスノウ一族の【光の牙】を持ったガーリルだった。

スノウ「ガーリル!」

ガーリル「……スノウ、ブルース。」

ブルース「どういう事だガーリル、何故こんな事を?」

ガーリル「…………。」

スノウ「何故、我が一族の牙を持っているんだ…?」

ガーリル「…すまない、許してくれ2人共!」

スノウ「待て、ガーリル!」

闇の光がガーリルの体を包んだかと思うと、その手に光の牙を持ったまま一瞬にして消えてしまった。

2人は衝撃のあまりしばらくその場に立ち尽くしていたが…

ブルース「ガーリルが何をしようとしているのかは分からないが、これ以上牙を奪われてはいけない。」

スノウ「…そうだな、手遅れになる前にガーリルを止めなくては。」

ブルース「迷っている暇は無いな…スノウ、お前はどう動く?」

スノウ「ガーリルが持っていたのは闇の牙と光の牙のみ…幸い海の牙、波の牙、雪の牙、影の牙は無事なままだ。ブルースは国へ戻ってくれ、俺はラクトの所へ行って事の次第を伝える。」

ブルース「分かった、お互い気を付けて行こう。」

スノウ「あぁ。」

こうしてガーリルの野望を阻止するべくスノウはラクトのいるネグロ一族の国へ、ブルースは自分の国へ戻ったが、その間に事態は深刻になっていた…。

ラクト「スノウ、これは一体…何故ガーリルは【影の牙】を…それに【雪の牙】まで所持していた…。」

スノウ「一足遅かったか…!ガーリルは全ての一族の牙を奪うつもりだ…何があって突然こんな事を始めたのかは分からないが、これ以上ガーリルを放っておく訳には行かない!」

ラクト「…俺は……」

スノウ「ラクト?」

ラクト「すまない、こんな時に………ガーリルと俺は異父兄弟…だが私はあいつがその事を気にしてるんじゃないかって不安でな…兄でありながらいつも傍にいてやれなかったから、ガーリルにとって俺は必要ないんじゃないかと…。」

スノウ「そんなことはない、ガーリルにとってお前は何よりも大切な存在…あいつはいつも『俺が弟で幸せだろうか』とラクトを気遣っていた。そんな言葉を聞いてしまったら、俺が何を言いたいか分かるだろう?」

ラクト「…ありがとうスノウ、私は幸せ者だ。だからこそガーリルを止めなければならないな、かけがえのない大切な弟の為に!」

スノウ「そうだ、俺達はみんな家族なのだから。(ブルース、マリン、牙を守り通してくれ…ガーリルがこれ以上暴走しないうちに…!)」

一方、ブルースは国へ戻りマリンと王家騎士団に事情を話し、厳重な警戒の元夜を迎えた。

マリン「ガーリル…一体何があってこんな事を。」

ブルース「とにかくガーリル本人から聞き出さない事にはどうにもならない…4つの牙は既に奪われ残るは俺達の海の牙と波の牙のみ、だがどんな理由があろうとも牙を簡単に渡すわけにはいかない。」

マリン「えぇ、そうね。」

ブルース「万が一に備えて安全な逃げ道は確保してある、例え何があってもお前とアクアは絶対に護る…例え我が命に代えても。」

マリン「…ブルース……。」

ブルース「そんな悲しい顔をするなマリン、アクアが心配するぞ…俺が傍についている、愛してるよ。」

そう言うと、ブルースはマリンに優しく口づけをした。

だが…そんな思いも虚しく悲劇の時は遂に来てしまった!月明かりに照らされた辺りが突然暗くなったと思うと、王家騎士の足下に何かがまとわりついた。

王家騎士「な…これは!?」

ガーリル「危害は加えない…すまないが、しばらくおとなしくしててくれ。」

そういうとガーリルは牙の部屋へと向かい、その間に王家騎士達は闇に包み込まれてしまった…。

王家騎士「奇襲です、相手はダーク一族国王ガーリル様とその護衛騎士!お二方、アクア様を連れて早くお逃げ下さい、我々が誘導します!」

ブルース「分かった、行くぞマリン!」

マリン「えぇ!」

アクアを抱えたマリンの手を取り、ブルース達が脱出した少し後にガーリルの足音が牙の部屋へ近づき…

バンッ!!

乱暴に部屋のドアが開き、ガーリルは宝箱を開けたが既に中身は何も入っていなかった。

ガーリル「牙を持ち出したか…捜せ、何としても牙を奪うんだ!」

無事に脱出したものの、ガーリルの護衛騎士達が捜し回っている為、迂闊に動けない。

ブルース「マリン、お前の牙を俺に預けてくれ…アクアを連れてスノウの所へ逃げるんだ。」

マリン「嫌、私は絶対に貴方の元を離れないわ…!今離れたら私達…もう二度と…」

ブルース「お前はアクアの母親でありザフィーアの女王だ、国民の為にもアクアの為にも今はそんな事を言ってる場合では…」

マリン「それは貴方も同じ、王でありアクアの父親よ…だから命を無駄にしないで…!」

ブルース「マリン…くっ…どうすれば…!」

遂に攻めてきたガーリル達…ブルースに苦渋の決断が迫る!

~To be continued…~