オリジナル小説「引き裂かれた絆」

遂にガーリルの手はブルース達の所へも向けられた。

牙を護る為に城を脱出、しかしガーリルの護衛騎士の追っ手が迫る…

国を、民を、家族を護る為にブルースは決断を迫られる!

 

~引き裂かれた絆~

 

マリン「ブルース…ここに隠れているのも限界だわ…!」

ブルース「しかし今出て行けば必ず見つかってしまう…どうすれば…!」

王家騎士「我々が彼らを食い止めます、その隙にお二方はアクア様を連れて陸へ向かって下さい。」

ブルース「しかしそれではお前達が…!」

王家騎士「王は常に平等であると同時に冷酷さも持ち合わせなければなりません、時には生き残る為に犠牲を覚悟しなければならない…ブルース様なら分かっておられるはずです。」

ブルース「…お前達に命を下す、ガーリルの護衛騎士の足止めをせよ。」

王家騎士「はっ!」

ブルース「お前達を信じているぞ。」

マリン「全員必ず再会するのよ。」

王家騎士隊長「はい、我らも信じております…どうかご無事で!騎士達よ、我らが主君を必ずお守りするぞ!」

ガーラス「こちらも応戦しろ、但し絶対に殺すな!」

こうして…両一族の騎士達の攻防戦が始まった。

その間にブルース達は本来の姿であるワニになり陸へと急ぎ、追っ手も無く無事に陸へ辿り着いたのである。

ブルース「大丈夫だ、ワニのままだと目立つから人の姿に変わろう。」

マリン「気づかれなかったみたいね、良かった。」

ブルース「だがまだ安心できない、とりあえずスノウと合流して…」

ガーリル「やはり陸に逃げていたか。」

マリン「ガーリル…!」

驚く視線を向ける2人の先には…ガーリルが立っていた。

ガーリル「お前達に危害は加えたくない、おとなしく牙を渡してくれ。」

ブルース「お前も知っているはずだガーリル、牙はその血を引く者だけが使う事を許されるのを…あの牙の中には我らの先祖の力、国宝である剣が封じられている。」

ガーリル「もちろんそれは知っている、一族の血を引く者として当然の事だからな…だが俺には牙がどうしても必要なんだ。牙を渡せ2人共、渡さないのなら力ずくで奪うまでだ!」

ブルース「…マリン、アクアを連れてスノウの所へ逃げろ。」

そう言うとブルースは海水を操りシャボン玉の様にした物でマリンを包み込んだ。

マリン「ブルース!!」

最後にマリンが見た光景はワニに姿を変えたブルースとガーリルが互いに睨み合う姿だった。

『マリン…』

マリン『ブルース…?』

スノウ「マリン、大丈夫か?」

目を覚ますと、そこにはスノウがいた。

マリン「スノウ…私…一体?」

スノウ「アクアを抱えて倒れていたんだ…無事で良かった、アクアはぐっすり眠ってるよ。」

マリン「よかった…アクア。」

スノウ「ブルースはガーリルを引きつけて海へ潜っていった。ガーリルもそれを追って…。」

マリン「私達にすら牙を向けてきたわ…何かとても必死な様子で、どうしても牙が必要だと言っていた。」

スノウ「…ガーリルの仇…あいつを封印する為にかつて全一族の王が共に奴と闘ったが、もう少しで封印できるという所で、不意をつかれ…結局みんなやられてしまった……俺達は同時に両親を失い王位に就いたあの時に約束したよな、どんな事があっても俺達は助け合って生きていくって…しかし牙は全て奪われ、ガーリルの行方も分からない…俺達にはもうどうすることも…。」

マリン「スノウ…。」

その時、寝ていたアクアの手から何かが落ちて、カンッと音を立てた。

スノウ「これは…牙!?どういう事だ、何故アクアの手に?」

マリン「待って、アクアの手にまだ何か…手紙の様な物が握られてるわ。」

スノウ「ブルースからの手紙か?読んでみよう。」

マリンはそっと手紙を取り、その内容を読み始めた

『マリンへ』

この手紙を読んでいる時、俺はお前とアクアの傍にいられないだろう…ガーリルの野望を止める為に牙をお前に託し、俺はガーリルを引きつける為に自らの牙を抜いて作った【偽の牙】を持って逃げるが、これだけはお前に約束する…どんな事があっても俺は必ず生きてお前達と再会する!いつまで離れるか分からないがそれまで待っていて欲しい、愛している…マリン。

泣き崩れるマリンをスノウはそっと抱きしめ…落ち着いてから彼女が続きを読み始めると、そこには衝撃的な事が書かれていた!

マリン「…スノウ、お願いがあるの…アクアの記憶を封印するわ。」

スノウ「マリン、そんな事したらアクアは自分が王女だという事すら分からなくなってしまうんだぞ…!?」

マリン「分かってる…けどブルースの手紙には『アクアはまだ幼い、この争いに巻き込みたくない。それにこの子はラグシーとザフィーアの血を引いている故に今はまだ力をコントロールできない、万が一ガーリルの部下に捕まって力を利用されたら島ごと滅ぼされる恐れがある…最悪の場合、力で自らを滅ぼしてしまう可能性もある。』と書かれているの。」

スノウ「そうか…俺も純血の者同士の血を引いているから経験しているが、幼い頃は力を大きく抑えられていて成長するに従って徐々に力をコントロール出来る様に調整して貰っていた、ブルースの居ない今はそれが難しいという判断か…しかし記憶を封じた所で、いつかはアクア自身は力をコントロール出来る様にならないといけないんだぞ。」

マリン「その時が来たら記憶を蘇らせるわ。この子は2つの血族を引く王女…成長すれば、必ず自分の力をコントロールできるわ。」

スノウ「記憶を無くしたら一族の事も分からなくなる…刺激しない為にも一族の事は隠さなければならないし、記憶が戻るまではお前とアクアは『ルーエ一族』としてここで生活してもらう事になる。ブルースがいない状況で、国へ戻る事もなかなかできない苦しい状況が待っている……それでも記憶を封印するのか?」

マリン「封印するわ、それでアクアを守れるなら…あの人とまた会えるなら…!」

スノウ「分かった…ブルースがいない間お前達親子の身の安全や生活は俺が保証する、ダーク一族も我が護衛騎士に命じて動きを見張らせておこう、いくらでも頼ってくれ。」

マリン「ありがとう、スノウ。」

愛する者を護る為、今一大決心をした者達がいた。たとえ自らを犠牲にしても…。

~To be continued…~