小説「緑髪の少年(出会い編)」~揺れる心~

まだ薄暗い朝方…ポナがふと目を覚ますと、外はまだ陽が昇っておらず…とても静かだ

傍にあるランプをつければ、優しくて温かい光がポナを照らし、腕の中を見れば…そこには安心しきった表情で眠るまめみの姿が…。

ポナ「(まめみちゃん…。)」

そっと頬を撫でるポナ、まめみは少しピクッと反応したものの起きる気配はない

ふと下を見ると、服の間から覗く谷間が目に入って…

瞳も黄色からオレンジに変わり始め、彼女への欲が出てしまいそうになる。

…ここで暮らす事に決まったあの日…まめみちゃんへの感情は…「友達」じゃなくて「1人の女性」としての大好きに変わっていると自覚したんだ

……分かってる…まめお君は…従兄以上の気持ちをまめみちゃんに向けているんだと…

…………………

ごめん…まめお君…

……それでも…僕は…好きなんだ…

まめみちゃんが…好きなんだ…

まめお君でも僕は譲れない…

この気持ちは……抑えられない…

そう思いながらポナがまめみを抱きしめる腕の力を強めると、腕の中でまめみがモゾモゾと動いた。

まめみ「んっ…。」

ポナ「まめみちゃん…。」

優しく呼びかけるポナ

すると…まめみはゆっくりと瞼を開いて…桃色の瞳はオレンジに変わったポナの瞳を映していた。

まめみ「ポナ君…。」

ポナ「おはよう、まめみちゃん。」

まめみ「おはよう、ポナ君。」

ポナ「…はぁ…まめみちゃん…!」

興奮気味のポナ…抱きしめて、まめみの頭を何度も撫でた。

まめみ「ポナ君…?」

ポナ「大好き…大好きだよ…まめみちゃん…。」

まめみ「ポナ…君…。」

ポナ「………分かってる、まめお君の事だよね?」

まめみ「っ……!」

ポナ「………まめみちゃん、僕は…まめみちゃんの事を「1人の女性として」大好きなんだ。」

まめみ「…………!!」

驚いて目を見開くまめみ…桃色の瞳は揺れて、ポナのオレンジに変わった瞳を映している…。

ポナ「………この気持ちは抑えられないし諦めて身を引く事も出来ない、相手がまめお君でも僕の気持ちは変わらないよ。」

まめみ「…ポナ…君…!!」

トクン…トクン…まめみの心は揺れた

まめおは1つ年上の従兄…

赤ちゃんの頃からずっと一緒だった、離れた事は一度もなかった

母親を亡くした後も…スルメさんとよっちゃんに出会うまで…ずっと2人で生きてきた…

恋をした事が無いが「まめおが居る」から必要無いと思っていた…

まめおとずっと一緒に生きていく…そう思ってた

「まめお」しかいないと思ってた。

…しかし今、目の前にいるのは…まめおではなくポナ

まめお以外の男性を知らない…外の世界を知らないまめみ…

ポナ「…まめみちゃんは…僕の事は友達なのかな…?」

ドキン…まめみの心は大きく揺れた…

目の前にいるポナは真剣な表情で…

黄色に戻った瞳は、まっすぐまめみを捉えていて…

いつものポナとは少し違う「1人の男性」に見えて…

ドキドキが止まらない…

まめみ「あたし…あたしは…あたしは…」

返答に困って、しどろもどろになってしまったまめみ。

その様子を見たポナは、ゆっくりと顔を近づけて…耳元で囁いた。

ポナ「…今すぐに答えなくて良いよ。…でも、僕は本気だから。」

そう言って、まめみのおでこに顔を近づけて…

「ちゅっ」とキスをした

そして起き上がり、シャワーを浴びに部屋を出て行った。

1人残されたまめみは…ゆっくりと起き上がり、ベッドの上で座ったまま掛け布団をぎゅっと抱きしめた。

フワッ…布団からはポナの香りがして…

安心感を覚えたと同時にポナの言葉を思い出し…

おでこには唇の感触が残っていて…鼓動は早くなり、その頬は赤く染まった。

ノズルを回して、インクリング専用のシャワーを浴びながら、

ポナは静かに目を閉じた。

言ってしまった…まめみちゃんに告白しちゃった…

…でも僕は本気なんだ…

まめみちゃんを愛したい…独占したい…誰にも渡したくない…それがまめお君であっても…。

昨夜のまめみの様子が頭から離れない…

体…声…温もり…全てが愛おしくずっと抱きしめていたい。

体を綺麗に洗いシャワーを止めて上がると、浴室にはいつの間にかタオルが置いてあって…まめみが置いて行ってくれた…そう思うだけでポナは心が暖かくなった。

同じ頃…まめおはスルメさんのお店で目を覚ました。

まめお「ふあぁ…。」

大きなあくびをしながら伸びをして…パジャマを脱いで畳み、服に着替えて台所へ行くと、よっちゃんがご飯の準備をしていた。

よっちゃん「おはよう、まめお君。」

まめお「おはよう、よっちゃん。スルメさんの具合はどうだ?」

よっちゃん「まだ痛そうだったわ…起き上がるのも大変みたい…。」

まめお「そうか…まぁ、俺がいるから任せてくれよ。」

よっちゃん「本当にごめんねまめお君、まめみちゃんも大変なのに…。」

まめお「まめみはポナが見てくれてる、あいつがいればまめみも少しは違うだろう。」

まめみは1つ年下の従妹

小さい頃から…俺がずっとあいつを守ってきた

まめみは俺が守る、これまでも…これからもずっと俺があいつを守るんだ。

よっちゃん「まめお君、このご飯をスルメさんに持っていってあげて。」

まめお「あぁ。」

よっちゃんから朝ご飯の乗ったお盆を受け取り、まめおはスルメさんの部屋へ向かった

スルメさん「おぉ…おはよう、まめお…あいたたたたた…!」

まめお「おはよう、スルメさん。無理するなよ…。」

起き上がるスルメさんを、まめおが傍に来て支えた

スルメさん「うぅ…腰を痛めるとは…アカンわ…。」

まめお「今は俺に任せて、ゆっくり休んでくれよ。」

スルメさん「悪いなまめお…あいたたたた…!」

まめお「朝ご飯食べれそうか?」

スルメさん「あぁ…ここにクッション置いてもらえれば食べれそうやわ。」

まめお「ここだな?」

起き上がらせたスルメさんの後ろにクッションを置き、スルメさんは朝ご飯を食べ始めると、よっちゃんが食事を持って来た。

よっちゃん「ありがとうまめお君、朝ご飯が出来たから食べましょう。」

まめお「ありがとうよっちゃん。」

2人「頂きます!」

スルメさん「…まめお、まめみの様子はどうなんや?」

まめお「…相変わらずだ、最近は部屋の外には出る様になったけど外やテレビをボーっと眺めてるだけで…外に出るのは嫌がるな…。」

よっちゃん「無理もないわ…今は人に会うのも怖いでしょう…。」

スルメさん「まめおとポナ、ボクらだけは平気なんやな…。」

まめお「あぁ、でも…ポナはまめみに触れてない…あいつが泣き叫ぶ度に俺が抱きしめてる…。」

スルメさん「大丈夫かいな…?万が一まめみがまたパニックを起こしたら…。」

まめお「いや、ポナなら大丈…そんな気がするんだ。」

スルメさん「まめお…。」

その後も3人で色々話しながら食事を済ませ、まめおは店の手伝いを始めた

テーブルを拭き、椅子を綺麗に並べ、外を掃除して…

準備が終わって開店した頃には、朝日も昇ってすっかり明るくなっていた。

お店は相変わらず大盛況で、まめおはあっちにこっちにと忙しく動き回り、一段落着いた頃には午後になっていた…

まめお「ふぅ…やっと一息つけるな…。」

よっちゃん「お疲れ様、まめお君。はい、お昼ご飯よ。」

まめお「ありがとうよっちゃん、動き回って凄い腹減ってたんだよ。」

よっちゃん「まめお君のおかげでスルメさんも私も助かったわ、まめお君の大好きなきんぴらもあるわよ。」

まめお「やったぜ!ありがとうよっちゃん。」

そう言って「頂きます!」と手を合わせると、まめおはお昼ご飯を食べ始めた。

食べている時…ふと「卵焼き」が目に止まった。

まめみ『わーい!卵焼きだー!』

まめお「………………。」

まめみ…昔からよっちゃんの作る「卵焼き」が大好きだよな

…お前の好きなもの、嫌いなもの…俺は全部知ってるぜ

底抜けに明るくて、そのくせ人見知りが激しくて泣き虫で…でも人一倍頑張り屋で…

そんなお前を俺はずっと傍で見てきた…

いつも揶揄ってたけど…本当はお前が可愛くて愛おしくて仕方ねぇんだよ。

まめみ…笑顔をまた見せてくれ

お前の笑顔を取り戻せるなら…俺はどんな辛い事でも乗り越えられる!

To be continued…