小説「夢結ぶ星りんご」~三日月の告白~

マホロア「あのネズミがアイシェに近づいテ、紳士過ぎてアイシェがドキドキしちゃってるんだヨォ…。」

カービィ「そうなの?」

マホロア「そうダヨォ〜!デモ、そうだとしてもサァ…何でボクがタランザなんかに紳士の嗜みを叩き込まれなきゃならないんダヨッ!!」

プンプンと湯気を出して怒りながら話すマホロアに対し、カービィはひたすらお菓子を食べながら相づちを打っていたが…

カービィ「でも、アイシェはマホロアの事が大事な恋人なのは変わらないと思うよ。」

マホロア「エッ…?」

カービィ「確かにドロッチェは紳士だけどさ、今まで一緒に過ごした時間や思い出は、マホロアの方がずっと長いよね?」

マホロア「ウン…。」

カービィ「きっとアイシェも、マホロアに心配をかけたくないから1人で考えてるんじゃないかな。」

マホロア「カービィ……キミ意外と考えてるんダネ。」

カービィ「ちょっと、マホロア!」

さらっと失礼な事を言うマホロアに、カービィはほんの少しムッとした表情になったが…

マホロア「アハハッ、ゴメンヨォ…デモ、キミの言葉で気持ちが軽くなったヨ。」

カービィ「マホロア…。」

マホロア「アイシェの気持ちを軽く出来る様二、ボクも頑張るシ…今日の教えをちゃんと生かせる様に練習するヨォ。」

カービィ「アイシェ、きっと喜ぶよ!」

マホロア「ウン!」

そう話す2人はとびきりの笑顔で、その後は穏やかな時間を過ごした。

そして、マホロアがローアに帰った頃にはすっかり夜になっていて…

マホロア「ただいま~アイシェ。」

アイシェ「お帰りなさい、マホロア。」

マホロア「アイシェ、顔色が良くないヨ…具合悪いのカイ?」

アイシェ「…うん、少しお休みするね…。」

そう言うとアイシェはサッと部屋に行ってしまった。

マホロア「あのネズミとの事で気疲れしチャッタカナ…後でアップルティーを持って行ってアゲヨット。」

そう言いながらお風呂に入る為に洗面所へ向かったマホロア…

一方のアイシェは、部屋の中から鍵をかけて…ドロッチェからプレゼントされたドレスに身を包んだ。

そして窓を開けて…

アイシェ「これくらいの高さなら大丈夫そう…。」

事前に結んでいたシーツをそっと窓から垂らして、ゆっくりと下りていき…

無事に地面に下り立つと、小走りでドロッチェとの待ち合わせの場所へ向かった。

しばらくして…

ドロッチェ「アイシェ。」

アイシェ「…こんばんは、ドロッチェ。」

ドロッチェ「会えてよかった…君に見せたい物があるんだ。」

アイシェ「私に?」

ドロッチェ「この先にあるんだ。」

そう言うと、ドロッチェは木の生えている丘の下に停泊している自身の飛行船を指差した。

アイシェ「(あれは…ドロッチェ団の飛行船。)」

ドロッチェ「それでは行こうか。」

アイシェ「う…うん。」

優しく差し出された手を取り、アイシェは飛行船へと向かった。

同じ頃…上空ではタランザがふわふわと飛んでいた。

タランザ「全く、あの後マルクのイタズラに付き合わされて大変だったの…早く帰らないとなのね!」

そう呟きながら飛んでいたタランザだが、ふと下を見ると…ドロッチェと共に歩くアイシェを見つけた!

ドロッチェ「さぁ、入ってくれ。」

飛行船の中に2人が入っていくのを見たタランザは…

タランザ「大変なのね、マホロアは何をやってるの!?」

驚きつつも、とりあえず自分が助け出さねばと飛行船の近くに降り…しばらく様子を見る事にした。

一方、中に入ったアイシェは…

アイシェ「わぁ…綺麗!」

彼の部屋にある数々のお宝を見て、目を輝かせていた。

ドロッチェ「色んな星々から頂いてきたお宝だ、そしてこれはお宝では無く今日の為にオレが準備した物なんだが…夜にしか見れない代物でな。」

そう言うとドロッチェは小さな箱を持ってきて、アイシェの前でそっと開けた。

すると…それは青く輝く三日月の上に乗った白い花が咲き誇るガラス細工で、アイシェの青い瞳は見開かれてキラキラと輝いた。

アイシェ「すごく綺麗…!」

思わず見惚れてしまうアイシェに、ドロッチェは優しい笑みを浮かべ…

ドロッチェ「これを君にプレゼントしたいんだ。」

アイシェ「えっ…私に?」

ドロッチェ「…突然だが、オレ達は3日後に別の星へ向かう事になった。」

アイシェ「3日後…!?」

驚きを隠せないアイシェだが、ドロッチェは赤い瞳で見つめたまま真剣な表情で…

ドロッチェ「それはオレのアイシェへの気持ちだ。もしオレを選んでくれるのなら……3日後、そのドレスを着てここへ来てくれ。」

アイシェ「ドロッチェ…!!」

ドロッチェ「…朝の9時に出発する……良い返事を待っている。」

アイシェ「……………。」

その後、2人は飛行船から出てきて…

タランザ「アイシェ!」

アイシェ「タランザ、どうしてここに!?」

タランザ「帰ろうとしたら、アイシェの姿が見えたのね。」

ドロッチェ「アイシェの知り合いか?」

タランザ「ボクはタランザ、アイシェの友達なのね。」

ドロッチェ「そうか…オレはドロッチェだ、よろしくな。」

タランザ「よろしくなのね。…アイシェ、送って行ってあげるのね。」

アイシェ「ありがとうタランザ、それじゃあ…ドロッチェ。」

ドロッチェ「あぁ、気をつけてな。」

タランザがアイシェを抱き抱えて飛んで行き、ドロッチェはそれを見ていたが…

ドロッチェ「(あのインセクトボーイはオレを警戒していたな、まぁ仕方無いか。)」

そう思いつつ、マントを翻してドロッチェは飛行船の中へ戻って行き…

アイシェ「…タランザ…ちょっとだけここで休んでいきたい…。」

ぎゅっ…ドロッチェからプレゼントされたガラス細工を抱きしめて、アイシェは小さな声でそう言った。

タランザ「分かったのね。」

そう返事をすると、タランザはゆっくりと降りていき…2人は草むらに座った。

To be continued…