キスを止めると、アイシェはそっと目を開けたが…目の前にはマホロアのギラギラと光る黄色い瞳があって…
アイシェ「マホロア…私…」
何か言わなきゃ…そう思うのに、声は震えて言葉が出せない。
マホロア「キミは何をしたのか分かってるのカイ?」
いつもより低い声でそう言うと、アイシェの両手首を上げて左手で拘束し、右手でアイシェの顔を固定して激しいキスを始めた。
アイシェ「んっ…ふぅぅ…!」
苦しさに顔を歪めるアイシェだが、マホロアの舌が唇を無理矢理割って入ってきて口内を舐め回し…
ようやく解放されると、アイシェは深く呼吸をした。
マホロア「アイシェ、ボクは怒ってるんダヨ…黙って出かけてアイツと会ってたシ、メッセージカードの事も嘘を吐いていたヨネ?」
アイシェ「っ………!!」
マホロア「隠していたのは薔薇の花束じゃなくて、コレダロォ?」
そう言ってマホロアはマントの裏からメッセージカードを取り出すと、レボリューションフレイムを発動して…
ボッ!!
パチパチ…
メッセージカードは燃えて跡形も無く消えてしまい…アイシェは驚きと恐怖で青い瞳が小さくなる。
今までも嫉妬で怒る事はあったが、ここまでするのは見た事が無かった…そして気づいた変化は他にもあって…
アイシェ「(マホロア…今のレボリューションフレイム以外に魔法を一切使ってない…こんなに力が強いなんて…!)」
いつもなら魔法で拘束するのに、今日は己の力のみで拘束していて…アイシェは改めて、マホロアも男であると思い知らされた。
マホロア「男はネ…コ~ンナ風に出来るんダヨ。」
抵抗するアイシェに気づいているのか分からないが、マホロアは顔を近づけて相変わらず低い声のまま呟いて…
グイッ!!
アイシェのドレスの胸元を乱暴に剥いだ!
赤と黒を基調としたドレスの下からは、アイシェの綺麗な白い肌と形の良い2つの膨らみが少し覗き…恥ずかしさのあまりに顔を背けようとしたがマホロアの右手がそれを許さず、再び掴まれた。
アイシェ「やっ…ぁ…!」
マホロア「コンナ風に力尽くで拘束されテ、貪られてしまうんダヨ。」
そう言うとマホロアはアイシェの胸元に吸い付き…赤い花を咲かせた。
アイシェ「っ………!!」
マホロア「他にもコンナ風にネ。」
スルっとドレスの中にマホロアの手が入ってきて…アイシェの太ももを厭らしく撫で回していきながら徐々に股の間に迫り…下着の中に手が入ってきた。
アイシェ「っ…やっ…マホロア…!」
抵抗するがびくともせず、マホロアの手つきにアイシェは頬を真っ赤に染めてビクンと反応した。
相変わらず魔法を使わずに力のみで押さえつけるマホロアに、アイシェは驚きと恐怖、そして何よりも「マホロアに嫌われてしまうかもしれない」という不安でガタガタと震えていて…
マホロア「…気をつけテ、アイシェ…キミを失いたくないんダ。」
瞳を細め何度も優しくキスをして、ぎゅっと抱きしめるとマホロアはアイシェの手首を解放してそのまま離れて部屋を出て行き…
アイシェ「マホロア…っ…!!」
ゆっくりと起き上がったアイシェは扉の方を見つめて彼の名前を呼んだ。
マホロアが怒るのは当然だ、彼の黄色い瞳には激しい怒りと嫉妬…そして何よりも悲しみが籠もっていて…アイシェは胸元のキスマークに手を当てて、しばらく俯いていた…。
2人はそれ以来ギクシャクしていて…あまり顔を合わさないまま3日後を迎えた。
朝…無言で朝食を終えたアイシェは、あのドレスに着替えるとガラス細工を持って出かけて行き…
マホロア「アイシェ…ボクはキミの事……ッ…!!」
居ても立っても居られないマホロアは、アイシェを追ってローアを出て行った。
気づかれない様にそっと後をつけて…アイシェがドロッチェの飛行船の前に着いた時に、近くの木の裏に隠れてそっと様子を伺った。
一方…マホロアに見られているとは知らないアイシェは、飛行船の前に立っていたドロッチェの前に歩いて行った。
ドロッチェ「おはよう、アイシェ。」
アイシェ「おはよう、ドロッチェ。」
ドロッチェ「早速だが、返事を聞かせて欲しい。」
彼の赤い瞳が自分を真っ直ぐ見つめている…
アイシェはもう迷わなかった。深く深呼吸をして口を開くと…
アイシェ「ドロッチェ、貴方はとても素敵な方だと思う……でも…私、貴方の恋人にはなれない。」
ドロッチェ「アイシェ。」
アイシェ「ごめんなさい。」
そう言って、アイシェはガラス細工をそっとドロッチェに差し出したが…
ドロッチェ「……ハッハッハ!!」
突然大きな声で笑い出すものだから、アイシェは驚いて青い瞳をぱちぱちさせた。
アイシェ「ドロッチェ…?」
ドロッチェ「…分かっていたんだ、それでも言わずにいられなかったのさ。…………そして謝らなければならないのはオレの方だ、アイシェ。」
アイシェ「えっ…?」
ドロッチェ「…オレの香水に気づいただろう?」
アイシェ「うん。」
ドロッチェ「オレは普段、香水なんて使わない。…これは惚れ薬の成分が入っているんだ。」
アイシェ「えっ……それじゃあ…!?」
ドロッチェ「アイシェがドキドキしていたのは、その効果もある。そこに加えて、君はオレの振る舞いにときめいていた…結果的にズルイのはオレさ、卑怯な手を使ってまでも君を手に入れようとしてしまったんだ。」
アイシェ「ドロッチェ…!」
ドロッチェ「それだけ君の事が欲しかった。」
アイシェ「私がそれでもマホロアを選んだのは…その薬の効果に打ち勝ったって事なの…?」
ドロッチェ「あぁ、そうなるな。」
アイシェ「(マホロア…。)」
ドロッチェ「君はとても愛されているな、可愛い姫君。」
そう言うと、ドロッチェは持っていたステッキをマホロアの隠れている木の方へ向けた。
アイシェ「あの木に、何かあるの?」
全く状況が分からないアイシェは首を傾げたが、ドロッチェはフッと笑い…
ドロッチェ「そこに居るんだろう、虚言の魔術師マホロア?」
すると、観念したのかマホロアがゆっくりと姿を現した。
マホロア「アイシェ…。」
アイシェ「マホロア…!」
ドロッチェ「そのガラス細工は君にプレゼントしたんだ、そのまま持っていてくれアイシェ。」
アイシェ「ドロッチェ…!」
ドロッチェ「友好の証だ。この先もし何か困った事があったら、オレは友としていつでも君の力になる。」
アイシェ「ありがとう、ドロッチェ…!」
ドロッチェ「さらばだ、アイシェ…ここへ戻って来たらまた会おう!」
そう言うとドロッチェはアイシェの頬に別れのキスをして、マントを翻すと飛行船に乗り込んだ。
アイシェはマホロアの元へ駆け寄り…2人が見ている中、飛行船は飛び立って行った。
マホロア「アイシェ…アイツはドコに行ったノ…?」
アイシェ「あたらしいお宝を求めて別の星に向かったよ。」
マホロア「そうなんダ…。」
アイシェ「…帰ろう、マホロア。」
マホロア「…ウン…。」
2人がどんな会話をしていたんだろう…気になるマホロアだったが、アイシェと共にローアへ戻る為に歩き出した。
To be continued…