小説「夢結ぶ星りんご」~薔薇の花束と揺れる心~

ドロッチェに告白されて数日…あの日からアイシェは悩み、元気が無い日が続いていた…

マホロア達の前では明るく振る舞っているが、無理をしているのは誰の目から見ても明らかで…みんな心配していた。

そして変化はそれだけではなく…あの日以来、夜の行為も無い日が続いていた。

マホロアが迫っても…

アイシェ「ごめんなさい、マホロア…。」

そう言って彼女は自分の部屋に閉じ籠もってしまい…マホロアはお預けの日々が続いていた。

この日も断られ、仕方無く自分の部屋で魔力に変えたが…

マホロア「ハァ…モウ魔力に変換したり抜いテモ落ち着かないヨォ…。」

性欲がとても強いマホロア…元々は恋に興味が無かったので必要としていなかったが、アイシェと恋人同士になってからはもうその気持ちが抑えきれなくなっていて、初体験をしてからは尚更我慢が出来ない…

あの快楽を…アイシェとお互い求め合い愛し合う事を知ってしまった今は、最早応急処置では静める事が出来ないくらいに彼女を愛して欲しているのだ。

アイシェが悩んで葛藤しているのは知っているが、自分に出来る事は信じて待つのみ…こういう時に何も出来ない歯痒さを感じつつも、マホロアはひたすらに待ち続けたが…

その間もドロッチェからのアタックは続いていて、甘いふわふわのケーキやチョコレート、一輪の薔薇等も送られてきた。

そんなある日、アイシェが部屋で寛いでいると…

チリン…

鈴の音が聞こえた気がして、アイシェが急いで外に出るとドロッチェの姿は無い代わりに、赤い薔薇の花束が置いてあって…

ズキン…アイシェの胸はぎゅっと苦しくなった。

部屋に戻りテーブルにそっと置いたが、薔薇の間にメッセージカードが刺さっているのに気づいて、そっと抜いて読んでいくと…

愛しのアイシェへ

今夜7時、この前の大きな木の下に、あのドレスで来て欲しい。

ドロッチェ

この前のドロッチェの瞳が忘れられない…心の中ではマホロアをいつも求めているのに、その片隅にいるドロッチェの事が気になってしまう…

アイシェ「こういうの…浮気になっちゃうのかな…。」

そう呟いて伏せられたアイシェの青い瞳は悲しげで、そのまま俯いてしまった。

すると…

マホロア「アイシェ?」

後ろからマホロアの声がして、アイシェは慌てて振り返った。

アイシェ「ま、マホロア…?」

マホロア「どうしたんダイ?」

アイシェ「え…ううん、何でもないよ。」

マホロア「…後ろに隠してるのは何ナノ?」

アイシェ「何も隠してないよ…。」

そう言いつつアイシェは両手を後ろに回していて…マホロアは眉間に皺を寄せつつも、ゆっくりとアイシェに迫る…

その間に、アイシェはメッセージカードを薔薇の花の間に押し込んだ。

マホロア「…隠し事は良くないヨォ?」

アイシェ「マホ…ロア…。」

マホロア「魔法で言わせる手もあるケド…ボクはそんな手荒なマネはしたくないネェ。」

そう言ってマフラーを少し下げると、アイシェを抱き寄せてやや激しいキスをした。

アイシェ「んっ…ふぅ…。」

キスを止めると、頬を真っ赤に染めたアイシェが自分を見つめていて…そんな彼女の反応にマフラーの下でマホロアの口角が上がる

マホロア「隠してたのはコレ?」

そう言って彼が指差したのは薔薇の花束で…どうやらカードには気づいていない様だ。

アイシェ「……うん、ごめんなさい…。」

ズキン…アイシェの心は再び痛んだ

マホロアに余計な心配をかけたくない、そう思った故に嘘をついてしまった…

こんな事でやきもちを妬かせて傷つけたくない、マホロアに嫌われたくない…今のアイシェを纏うのはそんな感情だった。

マホロア「…何があっても、ボクはアイシェ一筋ダヨ。」

アイシェ「マホロア…!」

マホロア「大好きダヨ、アイシェ。」

アイシェ「ありがとうマホロア、私も大好き。」

マホロア「どういたしましテ。早速ダケド、ボクは出かけて来るネ。」

アイシェ「何か用事があるの?」

マホロア「マルクとタランザと会うンダ…アッ、コノ前の件、ちゃ~んとマルクに謝ったカラネ。」

アイシェ「ふふっ、よかった。」

マホロア「…やっと素デ笑ってくれたネ。」

アイシェ「えっ?」

マホロア「何でもナイヨォ~行って来るネ!」

そう言うとマホロアは急ぐ様に出て行ってしまい…

アイシェ「マホロア…。」

1人残されたアイシェは寂しそうにしつつ、棚に大事に飾られたマホロアのバルーンを見た

フロラルドの一件の後、カービィが再び作ってプレゼントしてくれたバルーンはアイシェの大切な宝物の1つとなっていて…近づいてそっと持ち上げると割れないように優しく抱きしめた。

一方、マホロアはマルクとタランザとの約束……ではなく2人を半ば無理矢理呼び出していた。

マルク「いきなり来たと思えば無理矢理連れ出して、一体何なのサ。」

タランザ「ボクも同じなの、突然何なのね。」

マホロア「アイシェがあのネズミとの事デ悩んでるみたいなんだヨォ…今日も薔薇の花束を送りつけて来たシ…。」

マルク「薔薇を送るとか、ほんとキザなのサ。」

タランザ「その薔薇は何色だったのね?」

マホロア「赤ダヨ…完全にアイシェへの気持ちの表れダヨネ。」

マルク「ヤベーじゃん、お前それでいいのサ!?」

マホロア「イイワケネーダロ!ダカラこうして相談してるんジャン!」

タランザ「相手は手強いのね……こうなったら、マホロアも紳士の嗜みを身につけるしかないのね!」

マホロア「エェーーー何でそうなるんダヨ!」

タランザ「アイシェは紳士の振るまいに慣れてないの…だからそれに対する驚きと戸惑いで、ドロッチェに好意を抱き始めてるんじゃって勘違いしてるのね!」

マホロア「マジカヨォ!?」

マルク「メタナイトもあそこまでじゃねーもんな…あんだけグイグイ来られたら、流石にアイシェでもそう錯覚してもおかしくないのサ。」

タランザ「ボクが紳士の嗜みを教えてあげる、アイシェの目を覚ます為にも頑張るのねマホロア!」

マホロア「キミに教えテ貰うのは癪ダケド…アイシェを取られない為ニモ、ボク頑張るヨ!」

こうして…タランザによってマホロアは「紳士の嗜み」を身に付ける事になったのである。

To be continued…